ライン嫌いが嗤われる

「ラインしてないんですか!?
今時ラインもしてないなんて、僕の知る限り
聞いたことがありません。おいくつですか?
ラインは早いし、既読機能もあって便利ですよ!」とこの若い専務役員は嗤い、
私の上司はそれに言葉尻を合して、
「そうですよね。この人、変わってるんですよ。もうしてください!」
と追従した。そうして私はそいつの名刺を見ると、
生年月日がメールアドレスになっていたので、
8つ年下の男から嗤われるのはずいぶんと不愉快なんだなと思った。


知ってる。
ラインがメールよりも早いことも、既読機能もあることも知ってる。
なぜそこまで求めるのだろうか。常に捕まえられる私。
私がなぜ君にそこまでしないといけないだろうか?
あああああ、息が詰まる、死にそう。ぶっ殺すぞお前。
苦しい。


愛想笑いと照れ笑いと恥が私の顔に出てきて、私はうつむきがちになり、
なんとも憂鬱で、どういうわけか自分は劣勢で、相手が上位で、
私は負けた気分になってくる。
「はあ、そうですよねえ。ラインに興味がなくて…」
火に油。
「じゃあ、サブの方とラインのやり取りをして、
間山さんがラインをすることに期待して(笑)。
ラインのダブルチャックがあれば、安心ですし、
ラインしますね、間山さん!ラ、イ、ンですよ(笑)」


私は明るく嗤われる。
このバカはラインと何回言ったんだろう。
ラインの回し者かてめえは。
私は「はい、そうですよねえ、ライン……やります!」
と合わせ、新人気分で、その気分は最低のくそみそで、
くそみそまみれの私はまたこいつの部下の気分だった。
上司は相変わらず、ニコニコ笑っている。


ライン嫌いな人間が世の中にいることを知らんのか、お前は。
人間の格好をしているミジンコの脳みそを持つ若い専務。
私はそいつの胸倉をつかんで、頭を一発殴って、
「バカかお前は」と嘲笑した。


目の前の相手は相変わらずニコニコ顔で、私の心はどす黒かった。