よく毛が抜ける
といっても、私のことではなく、猫の毛のことだ。
うちの猫は、とにかくよく毛が抜けるので、毎日の掃除が欠かせない。
換毛期だ。
私はドラッグストアで購入した紙タオルで毛を絡めとっているが、
追いつかないので、時々、掃除機をかける。
猫と生活する以前は週に1度の掃除機だったが、今は週3回になってしまった。
2日もたてば、床が毛だらけ。黒の靴下は毛だらけ。
細くて、柔らかい、白い毛だらけ。
今日も仕事帰りに、掃除機をかけた。
その猫は私の机の上が気に入って、だらーんと寝そべっている。
私が猫の背中をなでると、毛並みがそろって美しくなる。
私は美しいものが好きだ。
私は猫の背中を10回ほどなでる。そのなめらかな曲線と肉感が私の手掌に伝わる。
なで終えた先に毛の束ができる。
あんた、どんだけ毛が抜けんのよ。
私は猫に話しかけるが、この言葉を何度、猫にいっただろう。
猫は平然として寝そべっている。
私の猫は人に触られることを好ましいと思っておらず、
私もその範疇にあって、猫は寝そべったままブンブンマルをする。
ブンブンマルとは私の言葉で、
猫がいら立って、ぶんぶんとしっぽをふっている様をさす。
またブンブンマルして、あんたは。
ブンブンマルしても、毛は抜けんのよ。
猫はしっぽを振り振り振り回し、机にたたきつける。
わかったよ、わかりました。やめればいいんでしょ、やめれば。
猫はある時、机からひょろ、どたっと降りて、
和室に移動し、再び寝そべって、私のことを見つめている。
あ、寝た。
うちの猫はよく寝る。