名古屋取材その1

7月17日。名古屋で取材だ。僕は地元の駅で名古屋行きの電車を待つ。肌つやのよい女性が僕に話しかける。彼女は30年間映画館のチケット係として勤務。閉館して仕事を辞めた。75歳で胃がん手術。80歳のときに白内障の手術。最近、自転車で転倒、病院で骨粗鬆症と診察される。彼女は歩行を助ける杖を買ったが、あれは無駄だったと笑う。旦那は30年前に死去。今日、彼女は親戚の集まりに出席するから、億劫だが、こうして出かけている。彼女は今日の暑さがまだましだといいつつ、カバンから扇子をとりだし、パタパタとあおぐ。カクシャクとした彼女の口癖は、私、勝気やさかいな。御年85歳。僕は彼女の言葉にうなずき、反復する。僕は彼女に対する質問を考える。だが、彼女の話は止まらない。変だ。彼女は笑う。この年になると友達も死ぬし、近所は変わっていく、一人はさみしいで、話相手おらへん。娘には近くにいてほしいわ。僕は納得する。だから、彼女は話し続けたのだ。

僕は先の女性と別れた後、キャッチコピーの本を読む。おそらく大学生だろう2人が●●大学は云々、△△大学は…とやたら大きな声でしゃべる。大学生であることを周囲に自慢したいのだろうか。うるせーぞクソ野郎と僕は毒づく。ちょうどいいタイミングで眠気、寝る。10時半に名古屋に到着。地元の電車ダイヤは中途半端なので、この時間に名古屋入りせざるをえない。現地入りまで2時間ある。名古屋市美術館に行くことにする。

地下鉄伏見駅5番出口を出る。宝くじ売り場の女性に美術館の場所を聞く。ここをまっすぐ行っていただけば、美術館が見えてきますよ。歩いていると、オブジェ発見。タイトルは「宙へ」。

美術館の企画展の看板を発見。「見よ、天才レンブラント」。見ましょう、見ましょう、見させてください。


白川公園。大きな運動場や木々、噴水がある。親子連れ、友達、カップルで賑わう。僕のようなスーツ姿の人は見かけない。この公園を抜けると名古屋市科学館と美術館がある。名古屋市科学館の入場者は入場制限を受けているらしく、館外にまで並ぶ列。人々の視線の多さに負けて、僕はその行列を撮影できず。美術館のスタッフに行列の理由を問うたところ、恐竜展を開催しているかららしい。休日に恐竜展なんて…素敵。行列さえなければ、恐竜展に行っていた。

地下鉄伏見駅5番出口を出て、約10分。名古屋市美術館に到着。炎天下にさらされたスーツの中は蒸し風呂。暑い。