脱稿

広告、雑誌、本、検索エンジン、サイトのレビューなどから言葉を探し、組み合わせて、壊し、つなぎ合わせて、なめらかにする。何度も繰り返す。文脈を考慮し、文字を字数内に収め、誤字脱字を確認し、常用漢字かどうかをチェックしながら校正する。半日もすれば終わる作業かなと考えていたが、2日かかった。キャッチコピーと体言止め文章のいい勉強になった。今はぐっすり寝て、文字から逃げたい。

20時から某アパレルメーカーさまと食事会。机を挟んで、僕の前には女性モデルが座った。身長は170㎝前後、すらりとした身体。肩にかかるきちんと手入れされた栗毛色の髪。食事会の前にクリエイターたちと彼女がドアを挟んだ向こう側で響かせる笑いを聞いていた僕は、彼女を華やかな世界にあこがれる、中身のない人なのかなと想像していた。

彼女は明日は予定があるので、酒を飲めないという。しかし、彼女は場の空気(?)を読んで、まずは一杯、また一杯。僕はビールを一杯美味しくいただいて、ためらうことなくウーロン茶を注文。それを見て、彼女はウーロン茶を頼む。話流れは覚えていないが、彼女は医大生らしい。

小さな顔。大きな瞳。歯並びからわずかだけはみ出た前歯の一本。左を向いたときに見えるニキビ。彼女は愛想笑いを繰り返し、自分からあまり発言しない。彼女の食事のペースは、腹が減っていた僕とそれほど変わらない。彼女はよく気がつくし、周りに合わせられる今どきの大学生。一つだけ僕らと違う点があった。彼女は自分の知識をひけらかさない。

食事会は2時間で終わった。適切な時間だったし、これぐらいがちょうどいい。僕らは夜の街の夏の涼しい風に吹かれて、韓国語を話す観光客の集団の声を聞きながら、駅に向かった。モデルと話す機会はなかった。別の女性が僕の隣にやってきてからだ。彼女は僕と初対面なのに、積極的に話しかけてきたし、僕は人見知りするから、彼女の行動にビックリした。僕は戸惑いを顔に出さないようにして、適当に相槌をうつ。僕らは駅で分かれて、僕は家路についた。