めいどりーみん

いらっしゃいませ、ご主人様!

店内に響く威勢の良いメイドたちの声。ドレープ感のある白いドレスに、引き締まった足首のメイドたちが店内を動き回る。昼間だったせいか、店内の照明は薄暗い。けれど、雰囲気は明るい。一人のメイドがお店のステージで歌を披露し、3名の観客が身体を弾力的に弾ませながら、声援を彼女に送るからだ。その動きはメトロノームが弾力的に、規則的に動く針のようだ。

お店の名前はめいどりーみん。東京都秋葉原にお店を構えまるメイド喫茶

メイドが席を案内する。ようこそ、ご主人様、夢の世界へ。ご主人様はテーブル席になさいますか、それともカウンター席にしますか?テーブル席は○○で、カウンター席は●●です。ようするに、テーブル席よりもカウンター席が安いようだ。私はカウンター席を選択する。カウンター越しにBDシャツを着たバーテンダー女性がいる。ここは異空間だから、彼女のような人がいると安心できる。お仕事ですか。私はテレながら、うなづく。やがて一人のメイドが私に近づく。

萌え萌え。いらっしゃいませ、ご主人様。ご主人様はお初の方ですか。私、ミクと申します。よろしくお願いします、にゃん、にゃん。今から、ご主人様を夢の世界へお連れしますね。(彼女はポケットから何かを取り出す。小さな電気式ロウソクだ。彼女はロウソクに唇を当てる)。ご主人様、今からミクがこれをふーって吹きかけますね、ロウソクに火がついたら、60分間だけ、ご主人様は夢の世界ですよ、にゃんにゃん。いいですか、ふ〜(彼女はロウソクをつけようとするが、なかなかつかない。2度やり直して、点等するランプ)。さあ、ご主人様、夢の世界へようこそ。

ご主人様はお名前はなんておっしゃいますか。マヤマ様。いいお名前ですね(上目遣いの彼女。私との距離は50cm)。どこのお国からいらしゃったんですか。ええ!滋賀ですか、遠い。ミクも何度か行ったことがありますよ。(あなたはどこから?)ミクはめいどりーみん星から着ました(それって東京のどこですか?)宇宙にある星からミクは来たのです。ご主人様、今日はお食事ですかドリンクですか、にゃんにゃん。

彼女はメニュー表を手渡す。私は2200円のオムライスの価格に驚きながら、それを注文する。厨房にいた別の女性がオムライスにあと100円でチーズをのせることが出来ることを告げるが、私は断る。

ようやく少し余裕が出る。店内を眺める。テーブル席にいる3名の客は常連らしい。メイドは3名と会話をまわしている。どの顔もうれしそうだ。

別のメイドが私に、ご主人様、チーズかけるとトロトロで、すごく美味しいからオススメですよと言うから、従う。チーズ追加ですね。チーズ追加でーす。

10分後、オムライスが白磁のグラタン皿中央に乗せられ、その周りにデミグラスソースがかけられている。わかりやすくいえば、オムライスがお城で、ソースがお城の堀である。

ご主人様、お待たせしました、萌え萌え。あ(食事を採ろうとした私を制して)、待ってください、ご主人様。今からミクがケチャップでお絵書きします(お絵書き?)。にゃん、何がいいですか(あなたの星の旗にして下さい)。めいどりーみん星の旗ですか、そんなこと言われたご主人様は、ご主人様が初めてです、にゃんにゃん。待ってくださいね(彼女は両手でケチャップを逆さまにする。オムライスの上にまず四角を描き、次にハートマークをその中に描く。最後にハートマークの空白を埋める。顔の表情は真剣である)。

ご主人様、できました。今から、ミクがおいしくなーれ、おいしくなーれって言いますから、ご主人様もミクに続いてください。最後にハートマークをこうやって作って(彼女は左右の指を使ってハートマークを作る。恥ずかしい。私は仕方なくバーテンの女性を見るが、一緒にどうぞと笑顔で返される)、そしたら完成です。(彼女と私は声を揃えて)おいしくなーれ、おいしくなーれ、にゃんにゃん。さあ、召し上がれ。

私は熱くもないし、温くもないオムライスを食べていると、別のメイドが記念写真を取るから誰かリスクエストしたいメイドはいるかと聞く。私は記念撮影を行うとは思っていなかったし、リクエストしたいメイドはいないから、最初に担当してくれたミクさんをお願いしますと答える。

ご主人様、ミクにご指名ありがとうございます。じゃあ、ご主人様こっちにどうぞ(彼女はステージに私を案内する)。ご主人様、ミクがハートの片側をお作りいたしますので(彼女は左手の親指と人差し指でアルファベットのCをつくる。他の指はたたむ)、萌え萌え。ご主人様はもう一方のハートを作ってください(私は右手で彼女をマネるが、できない。私は慌てて、手首とか指の方向を変えるが上手くいかない。ミクさんは私の慌て方を見て、微笑む。ミクさんは私の隣に立ち、左手を差し出し、私は右手をそこに重ねる。ハートマークの出来上がり)。ポラロイドカメラを持ったメイドが私たちにカメラを向ける。はい、撮ります〜。パシャリ。

今、私の手元にあるポラロイド写真の私は満面の笑み。ミクさんの営業スマイルも堂に入っていて、自然だ。

ここで使ったお金は入国料の500円、食事代のオムライス2200円、写真代500円、帰りのメイド写真300円(誰だかわからない写真だったので、結局捨てることに)、締めて3500円。

めいどりーみん 秋葉原 本店

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