坪井明日香さんによる作品解説 in 京都市立美術館

京都市立美術館が3月22日から4月3日まで「女と陶芸展−坪井明日香と仲間展−」を開催している。オブジェ焼作家である坪井明日香さんによる作品解説が14時から行われることを知り、僕は現地に向かう。

坪井さんは女流陶芸というグループを結成し、女性が日本陶芸界でオブジェ焼作家として活動することにおけるパイオニアの一人である。その彼女自身による彼女の作品解説。こんな贅沢なチャンスは滅多にない。

黒地にアクセントとしての深紅模様。チャイナドレスのような木綿の衣に身を包み、観衆の前に現れた坪井さん。160センチ代の身長、がっしりとした体躯、ピンと張った背筋。1932年生まれだとは思えない。たまたまこの場にいた観衆が彼女を見たとき、彼女が普通の人ではないことを知るだろう。坪井さんは自身や作品を次のように説明する。

私は最初は食器などを作っていて、それから八木一夫さんとか鈴木治さんの走泥社の試みを知ったんです。オブジェ焼ですね。私は陶芸家の家に生れたわけではありませんが、食器を作るよりもこっちの領域が自分に合うかなと思いました。今は女性も男性も陶芸に携わって垣根のない時代です。近頃は女性の作品のほうが男性よりも優れているような気がします。

けれども、つい40年ぐらい前は陶芸は力仕事ですから、女に陶芸なんかできないという雰囲気でした。窯一つとっても、女が神聖な窯に触ると穢れるなんていわれてたんですね。40年ぐらい前から設備の近代化が始まって、力仕事は機械で軽減化されて、女性でも陶芸ができる環境が整ってきたんです。

この作品「歓楽の木の実」は京都国立近代美術館に所蔵されてますが、70年代において、性的な事柄を表現する仕事を誰もしてこなかったんですね。それで、女性の乳房というものを表現してみようということで、この作品を作りました。評論家の先生から評価を頂きましたけど、どうして性的な事柄を表現したのか理解されない時代でした。

それから当時の陶芸作品のタイトルは「○○○文様壷」、「○○○牡丹大皿」とか長くて読みにくい漢字のタイトルばかりでした。パンフレットを見てくださればわかるように、私の作品タイトルのような詩的というか、端的なタイトルはあまりなかったんです。その点でも新しいことができたかなと思っています。

女性が陶芸家を辞めてしまうことを残念に思います。やっぱり続けていくということが大切ですね。ここにいらっしゃるみなさんは何かをしてやろうという顔に満ちているように見えます。私は以前に左手を怪我しまして、それから左手が少し動かしづらいんですね。ですから、本当にやれることはやっておいたほうがいいですよ。

坪井さんは非常に興味深い存在である。主な理由は3つ。男性中心の日本の陶芸史に書き換えを迫りうる存在であること、男性中心の陶芸作家界の変容を明らかにできること、そして女性が陶芸作家として陶芸界で生きていくことの開拓者であること。彼女の半生の聞き書きを行いたい者は僕に限らず、少なからず存在するだろう。そういう仕事は日本陶芸界において存在しない。だから、それが求められている。