『福島原発メルトダウン』

福島原発メルトダウン』という本をご紹介。著者は作家の広瀬隆さん。本書は福島原発の事故の解説から始まり、地震の多い日本で原発を建設・運営することの危なさを説き、原発がなくとも電力を供給できることを主張します。以下、面白いと思った3点。

実は、マグニチュードの計算法には、いろいろな物差しがあります。これまでの地震はすべて、日本では「気象庁マグニチュード」を採用しており、その計算式に東北地方三陸地震のデータを入れると、「いくら大きくてもマグニチュード8.3か、8.4どまり」と島村さん(注、島村さんは地震・地質学者)は指摘するのです。それが9.0にまで上昇した理由は、「日本では学者ぐらいしか使っていない『モーメントマグニチュード』で気象庁が計算し直したからだ」と。なぜ、いままでの物差しを気象庁は突然に、何の説明もなく変更したのでしょうか。当初のマグニチュード8.4のままだと、今回の地震が「想定内」の天災ということになり、原発を運転してきた東京電力のみならず、原発を推進してきた政府や「専門家」らも責任を追及されることになるからです(pp74−75、一部省略)。

棒グラフのいちばん上の原子力がなくても、火力と水力で発電能力は十分、間に合っています。過去の最高消費のピークは2001年で、それ以降10年近くもこれを超えていません。なぜ、「原発が電力の3分の1を占めて、原発がないと停電する」かのような誤解を招いてきたかといえば、わが国は、大量の発電能力を持った天然ガス火力を抱えながら、その稼働率を5割〜6割におさえてきたからです。天然ガス火力とは、最もクリーンで、世界的にも先進国で現在の主力発電の設備なのですよ。ガスではなく、石油火力もあります。こちらは驚いたことに、1割〜2割の稼働率なのです。原発がないと停電する、と考えることがナンセンスです(pp220−222、一部省略)。

独立系発電事業者の電力をフルに活用すれば、日本は停電など100%起こり得ないのです。1997年12月の「電力事業審議会基本政策部会」中間報告によれば、将来に制度を改革すれば、(注、電力事業の)潜在的参入規模は、3800万〜5200万キロワットに達する見込みである、と述べています。この制度改革とは、電力会社が握って、ほかの発電業者を排除に使っている送電線の独占をやめさせることです。発電と送電の事業を分離し、送電線は国家が「国民のために」管理すべきなのです。自由に発電できる業者が最大5200万キロワットあるなら、全国の原発5000万キロワットは廃絶しても、問題がないことに気づきませんか?これらの卸電力業者は、電力市場に新規に参入するのですから、その価格は現在の電力会社より安く供給されるようになって…。それらの企業とは、新日本製鐵昭和電工日立造船、出光興産、コスモ石油東京ガスなどなど。日本を代表する山のような大企業が、合計すれば大量の発電能力を潜在的に持っているのだから、日本政府がこれら企業に発電を指令すれば、問題が解決するのです(pp224−226、一部省略)。

FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン (朝日新書)

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