スズキトモコ(34歳)

(今日、職安に来た目的は?)「仕事があるかな」と思ってここに来ました。思ってたような仕事はいまいちなかったです。私はデザイン関係の仕事やってたんで、「それと同じような仕事がないかな」と思って。今まだ、在職というか会社に籍はある状態なんですよ。そやけど、そこの会社が自分がやって来たこととズレがあるから、「もう辞めたほうがいいかな」って。前に自分がやってたようなことをもう一回やろうかなと。それで仕事を探しに来てたんです。人間関係でトラブルもあったんですけど、仕事がデザインの工業系なんで。あたしはグラフィックやってたから、平面と立体のことが違うからね、そこが合わへんかな。

(在職中に仕事探しをすることへのうしろめたさは?)後ろめたさですか。仕事はよかったんですけど、ようはパワハラとセクハラがあって。私、裁判に訴えたんですよ。だから悪いのは会社やから、「もういいかな」って。仕事は変わってたから、やりたかったんですけど。工業系やから、おっちゃんらの職場なんで。女性に対して古臭い考えがあったんか、わからないんですけど。なんか目線がね、そういうのんで、私も具合が悪くなって。

(具体的にはどういうことでしょうか?)具体的には、電車を作ってる会社なんですけど、新幹線とかの女性専用のパウダールームみたいなものの企画をチームでやってる時に、何ていったらいいんやろう。えーと、狭いスペースをどういうふうに使うか、鏡置くとか、そんなんをやってる時に、ロッカーを閉じてそういう空間を作ってたんですけど。電池とか入ってないカメラとかを取り出してきて、「盗撮」とかいって。(僕は驚く。女は僕の反応を見て)まあ、びっくりしはるけど、「盗撮」とかいう。そのおっちゃんは遊びでやってはるんですわ。そういうマネ、「電池入ってないし」とかいって。あとなんやろう、「生理がどうのこうの」とかいう話を。多分、生物学的こなとで、そういうつもりでいってるのかわからないんですけど。あとは電車だからやっぱり自殺とかが多くって、グロイ話になるんやけど、そういう死んじゃう人の話とか。そういう「気持ち悪いなあ」って思うようなこととかをいわれたり、工場で死んだ人の話とかですね。セクハラとしてはいろいろ身に着けてるものを全部いうとか。さっきいうたそういう盗撮のこととか。「なんか喜ぶ」と思ってるんかしらんけど。まあ、弁護士さん通して、「それはどうかと思いますわ」っていうてもらったんですけど。ぶっちゃけいうてるけど。

(ご両親にはそういう相談を?)私、「電車の会社でそんなトラブルがあって」っていうことは親にいってますけど、相談はしてないですね。

(就業の条件は何ですか?)給料はよければいいですよね。今のお給料が27万ちょっと超えたぐらいやから、「それ以上あったらいいな」とは思うけれども。就職する会社が広告関係とかになってきたら、やっぱり多少ね、お給料の落ち込みがあるから、あんまりそこまで要求できひんかな。「頑張って、25万もらえたらいいのかな」って。社会保険は全部ついてほしいし、休みは祝日含めて週休二日必要ですね。形態は正社員ですね。あとまあ、派遣とかで週に4日ぐらいは働いて、あと1日、2日は自分でフリーになって稼ぐとかをしたほうがいいのかもしれない。会社にもたれかかり過ぎても、「そこしか糸口がないねん」みたいになったら、あとあとが不安やから自分でもなんかできることがないかなって。
夢っていうか、イラストの仕事をイラストレーターをやりたかったんですけど。イラストレーターの仕事って特定の商業メディアに乗っけて、仕事が決まってくるし。それで実際、絵を書くことに関して、私は「実は画家っぽいところの表出の仕方なんやなあ」っていうのがあって、注文されてあわせて書いたことも何回かやってたんやけど。お客さんのクライアントに沿うものじゃないと、駄目だしされるじゃないですか、当然ね。だから商業で絵を描くのは違うんかな。「じゃあ書きたい時に書きゃあええか。そういう画家をやろう」って思って(笑)。「それって一般的に趣味」って思われたら趣味やから、「好きなように書いて作品たまったら、展覧会してでいいかな」と思って。仕事に対して、今年ぐらいに本当に割り切りができた。

その電車の会社での経験で何が嫌だったのか。組織とかね、そういうこともすごい考えたし、組織と私が合ってるかどうか。生活でも仕事でもね、自分を軸にっていうか、自分の感覚を大事に置いとかないと。仕事とかどうしても対外的なものとか、「組織の中ではいい子にしとかんとあかん」とかなってくると、体外的な意識ばっかり働いて、「自分が本当に心地よいがどうかを感じられてない」と思うんですよ。そしたら精神的におかしくもなるし、そういうのんに気がついたから。「自分がどうしたいんだ」っていうことに気をつけておくことかな。まあ、精神論的なことですけど。

(不安はありますか?)不安はありますけどね、世の中がこんなんやからね。

(将来に希望は?)希望…希望か、ご飯を食べてやっていくしかないと(笑)。だから、その電車の会社で働いてたのもあるんですけど、「死んじゃうってどうなんだろう」っていうこともすごい考えたし。ちょっと前に心理学的なことに関心があって、カウンセリングの養成学校に行ってたんですけど、なんかやっぱりそこでも自殺者の話って聞くし、やっぱ不安はすごいあるんですよね。だけども、そこで死んだらほんまに終わるから、当然ね。でもその選択ができるのは人間だけやから、逆にしたけりゃしたらいいというか。肯定的な意味でね、そのほうが本当に楽なんだったらね。長く生きていくほうが、何ていったらいいんだろ、つらいんですよ、実は。つらくて当然みたいな、底を見たような感じがしたから。なんかね、それを思うとちょっとでも人に対して仕事をして、お金もらえるでしょ、ほんでご飯食べれるでしょ。「すごい」って思うんですよ(女は両手を「パン」とたく。うれしそうだ)。私の作業なり能力を買ってくれる人がいるんだ。それでお金をくれるんだということに対して、なんだろう「ありがたいなあ」と。一人、一人が個人として誰かに対してね、仕事をするでしょ。そこでお金をもらえたことに対してね、単純に感謝があれば、「仕事が楽しい」と思うし、「素晴らしいんじゃないか」と思うけども。世の中の人は「それをしたくないねん」とか、「しんどいねん」とかいって、「文句が多いな」と(笑)。つらいのは分かってんのやから、いかにあと楽しくしたらいいか。「自分がご機嫌でいられることが何かを探しゃあいいだけちゃうの」って思ってます。