キクチヨシコ(43歳)

女の口調は自分の能力を証明するかのように、早口で明快だ。

(今日、ハローワークに来た目的は?)今日は仕事の検索だけしました。主人がいるんでね。「今の職場を辞めてこんなんどうかな。そのあたりを検討してから」っていう感じになるんで。今の職場が組合とかの話で、「働ける日数を増やすいう方向にならないかな」っていうのを、待って、待って、「無理かも」みたいな感じでしか返事が返ってこないんで。

(業界は?)私は行政の事務をやってたんですけど、3年ぐらい前から年間130日とかの勤務日数の規制ありますよね。そこから年間80日の出勤に変えられたんですよ。ようは上から「長期間の雇用がダメだ」っていう話になって。ほんとは経験者が必要な職場なんですけど、3年間の雇用のあとは日数を80日に減らすことになって。それが原因で、現場はみんな困ってるんですけどね。経験者が80日ぐらいになったら、私も主婦なんですけど、収入が急に減るじゃないですか。半分か、半分以下になるんですよ。そうすると、経験3年ぐらいで仕事って、人の世話にかけないでできるようになるのに、3年こえたら80日出勤で切ってしまおうとするので、そうすると、「やっぱりもうちょっとお金がほしいですよ」っていう人は経験者でも力のある人でも、どんどん辞めてしまう。常に新人さんがいる状態で、職場の効率もすごく悪くなってしまって。「もう他のところを探そうかな」という感じにみんながなってしまう。

常に求人の補充はハローワークとかで出すんですけど。「この人、仕事ができるようになった」って思うと、辞めていかないといけないような状況になるんです。仕事をかけ持ちをする人もいるんですけど、そうすると、かけ持ちをしてない人たちに仕事の負担がかかりますよね。「この日は別の仕事がある」とかって向こうのかけ持ちの兼ね合いで、自分の都合で行ってしまう。それは別に仕方がないんですけど、そういう傾向が増える。そうすると、仕事が多い日、少ない日って大体メドがありますから、その辺でいつもシフトが固まって、人が過剰になったり、過不足になってしまうんですよ。だから、みんな、「今のこの仕事辞めようかな」ってなる。ただ、現場で働いてる公務員の人たちは、私たちに対して「もっと長く経験を積んで、仕事を頑張ってほしい」と思ってるんだけど。国のやることなんで、「上がダメ」っていったらそれに従うしかないんですよね。

(就業の条件は?)「条件がいい職場があったら」って思うんですけど、やっぱり主婦なんで、時間の都合のつけやすい職場って探すと、あんまり仕事ない。今の職場は私に急な用事があっても、融通が利きやすいし、バイト同士で都合をつけることがすごくやりやすいので、すごくいいとこなんです。ただ、働く日数が半分に減らされる、収入も減るので。私は5年近く、そこに勤めてるんですけど、かけ持ちをしてないんで、常に新人さんの世話、もうフォローばっかりしてる。賃金は変わらないんですよ。5年いても、昨日入った人と同じ、他の人より1.5倍ぐらいの仕事をしても同じ。それは、まあね、いってみれば、私も新人の時があったんで、世話するのは全然嫌ではないし、「頼ってもらえるのもいいかな」と思うんやけど。5年いても賃金は一緒だし、だけど働く日数は減ったままし、同じように3年ぐらいで教えてた人たちも、「この人も育ってきたな、仕事任せてもできるな」って頃になったら辞めちゃう。

雇用保険はつかない。年間130日とかっていう枠があった時は週に3日とか、4日とかで仕事に行けてたのが、年間80日になると週に1日とか、2日。ひどい時は1週間、2週間ぐらい空いてポツンと入るとか。で、経験が長いと、こなせる仕事量が多いので、年度末、月末とかに多い時にどんどん仕事に入るんですよ。それもまあ、忙しい時に入るのはいいんですけど、日数が減っちゃうのが何というか、減った時にやる気がガーンと失せちゃう。「え、給料半額みたいな、今までの半額かよ」みたいな感じになるんですよ。現場で働いてる公務員の人はみんな困ってるんですよね。これはやられたら困るんやけども、組合とかも会社に働きかけをしてるらしいんですけど、「変わりそうにないな」っていう話で。みんなが3年こえる頃には日数が減るのがわかってるので、「みんなが仕事を探しだす」っていう形になります。理不尽なんですよ。そんなたいした理由もないんですけど、「どこから80日の規制がきた?、なんで80日になった?」って。働く日数さえ増えれば、ここで、みんなと働きたいですね。年齢的に親が調子が悪いとかそういうのがあったら、みんな年齢的に近いし、交代してもらえるとかね、融通がすごく利くとこなんで。人が変わっても、仕事をこなす量をきちっとやってれば、職場には全然迷惑をかけない。

(世間にいいたいことは?)私、子どもがいないので、今すぐ学校にやるお金がとかいうことじゃないんですけど。子どもがいない分、将来の蓄えがないと、親ももう年ですしね。「自分たちの生活とか体が弱っていくのに、保険が降りるか」っていうたら、国民年金もどうなるかわかんないし。やっぱり、元気な時に蓄えておいて、なんとか生活ね、体が弱った時に、「人様に、親戚とかにね迷惑をかけないようにやろう」と思ったら、今のうちに働いとかないと。子どもがいる人はね、子どもがいない人のことを、ようは「今、楽でいくらでもお金貯まるからいいやん」とかっていうんですよ。それは、子どもがいるから、そりゃその時は大変かもしれんけど、自分がこの年齢になってわかるんやけど、親が何かあった時って、どんなに疎遠になっても、絶対に親元に行くじゃないですか。でも、子どもがいない人はそれがないんですよ。やっぱり「メイとかオイに来て」っていえないじゃないですか。どうしても頼らなければいけない時があっても、金銭的な負担までは「とてもじゃないけどできないから」っていうことがわかってもらえない。だから「楽してるね」っていう感じでしか理解されないんですね。かといって、子どもがいないんで、「共働きでたくさん働こう」と思っても、「子どももいないのに、なんで働くことばっかり考えるの」みたいにいわれることもある。年もいってきたんで、そんなこといわれるんも少なくなってきたんですけど。若い時は、「子ども作ることをなんで最優先に考えへんの」いわれるし、そういう葛藤もあって。なかなか外に働きにいけないこともあったんで。

時間の融通も利いて、親や親戚になんかあってもパッといけるような環境の職を探してしたら、行政の機関の仕事が一番、自分には時間の調整も利きやすい。「やっと見つけた」と思ったら、80日の制限(笑)、「え〜」って。「こういう仕事を民間の会社でできるか」っていったらできない。「同じ行政の仕事ないかな」って探すんですけど、3か月とか5か月とかそういう短期の仕事が多いし。あの、ハローワークの人がいってたんですけど、行政のパートとかを転々とする人もいるらしいんです。行政の仕事って結構、条件がいいので。土日必ず休みで、奉仕残業って行政できないじゃないですか。国の機関だから。だから、そういうところをあのメインで探して、契約期間が過ぎたら、また次の行政の職場にっていう人が。結構、そういう競争はあるみたいです。