アキモトオサム(50歳)

160センチ代の中肉中背の男が職安から出てきて、タバコを吸っている。僕は自己紹介を終え、取材を依頼する。男が口を開く。歯石が前歯全体にこびりついている。男は取材を渋りながら、語り始める。

(今日、職安に来た目的は?)今日は正社員探しやな。まあ、今はバルブいうか、金属業界でパートの仕事してるさかいに。午前中とか一日とかパートのシフトはバラバラやさかいに、空いた時間を使ってな、仕事探す。パートの前は公務員系、体とかいろいろ調子悪かったさかい、辞めてしまったけど。

(いい求人はありましたか?)自分が求人する職業はやっぱり皆無に近いな、ないな。どういうんかな。やっぱり、みんないわはるけど、「そんなん探したら絶対、何か仕事あるやろう」ってよくいわはるけども、「いっぺん、ハローワーク来て、見てください」といいたいね。来たらわかるって、どういう状態か。毎日、ここに来たほうが、ほらいいけど、その代わり人も集中するし。パソコンやらで調べたり、いろいろやっててもズレがあるわな。誰でも行きたいところは一緒やねん、重なってしまうねん、どうしても。なんか絶対、条件があんねんって。年齢、免許とかね。ものすごい条件があんねやわ。アメリカの金融恐慌以降と以前ではその条件が全く違うし。

(将来に対する不安や葛藤は?)不安とか葛藤はそやな、やっぱ、あるわな。家族問題とか子どもの問題とか、詳しくはいえんけど。

(世間に対していいたいことは?)やっぱり、結局、派遣とか請負とか、ほういうなんを選んでたら、結局辞めさせられるわけやんか。で、正社員を選ぶんでも、ほら、そっからパートに落とされたりするし。やっぱり、ギスギスしてるさかいね社会が。学校でも何でも、強いもの勝ちの社会になっとるさかいに。そこを政治とかで考えてほしいな。弱いもんがやっぱり負けていく時代やわ、そう思いますわ。