『一流デザイナーになるまで』

『一流デザイナーになるまで』という本をご紹介。著者はクリスチャン・ディオールさん、肩書きはファッションデザイナーです。本書はディオールさんの自伝です。以下、面白かった3点。

ディオールさんの衣装観。

衣装は常に私の毎日の命の感動でさり、喜びとやさしさの衝動なのだ。いくつかの衣装が私を失望させたり、瞞したりしたとしても、他の衣装は私がそれらを愛しているように、私を忠実に愛してくれた。衣装は始めから終りまで私の心を奪っている。それは私の生活に喜びを与え、また、苦しみを与える、天国と同時に地獄である(p81、一部省略)。

コレクション発表直前の心境。

値段を決めたり、コレクションの名前をつけたり、最後の仮縫いをしたりしている中に最後の夜がやってくる。晴れの日の前の夜に二つの相反した感情が生れる。一つは恐れである。何も用意出来てない。ちっともよい方へ向いていない。全部失敗だと考える。もう一つは楽天的な、理屈に合った気持ちである。今となっては何をするにも遅すぎる。運にまかそうという気持ちである(p138、一部省略)。

コレクション発表中の舞台裏での様子。

着替えの間にモデル達は勝利の報告をする。「うまく行っています。」、「喝采されました。」私はふるえながらもっとくわしく教えてくれという。「前の時と同じように気に入ったようかね。」頭をスカートの中に突っ込んで、彼女達は何度もうなずく。本当はショウで歩いている間は自分の歩き方に夢中で観客の気持ちは分かっていない。しかし彼女達は控え室に帰ってくると、「もてはやされているようです。」と報告する。凡ての衣装が成功するとは決まっていない。モデルに表れる反応も色々になる。思いがけない位激しい気性のタニヤは、ドレスが失敗だという事を認める事は出来ない。うけなかったドレスを着て控室に帰って来た時、彼女はロシア語で、観客は見る目を持っていないと独りでののしっていた。このような場合、他のモデル達は黙々と次のドレスを着て復讐に出て行く(pp149-150、一部省略)。

一流デザイナーになるまで

一流デザイナーになるまで