『ユナイテッドアローズ』

ユナイテッドアローズ』という本をご紹介。著者は川島蓉子さん。肩書きは伊藤忠ファッションシステム株式会社マーケティングマネージャです。以下、面白かった3点。

トレントセンターが作成する「トレンドブック」は、商品が市場に出る一年半ほど前に作成される。近未来に向けた社会の動向や人々の価値観がどう動くのかを視野に入れた上で、紡績やテキスタイル(布、織物)の色や質感が向かう方向をまとめている。そのトレンド情報をベースにして、紡績・テキスタイルメーカーは、糸や布をデザインする。これが市場に出る1年前くらいのことだ。そのテキスタイルを使って、ファッションデザイナーは服をデザインして、パリコレをはじめとするコレクションで発表する。これが半年前であり、パリ、ニューヨーク、ミラノの三大都市で開催される。百貨店や専門店など、ファッションの小売店は、コレクションショーを見た上で、自店の品揃えを決め、バイヤーが展示会で各ブランドに発注する。それとともに、広告やプロモーション戦略を練り始める。一方でファッション誌をはじめとするメディアは、コレクションショーの傾向を消費者に向けて発信していく(pp41-42、一部省略)。

セレクトショップという言葉が生れたのは1990年代のこと。バブルがはじけ、それまで脚光を浴びていたイタリアンブランドをはじめとする高級インポートブランドが急に陰りを見始めた。それとともに、それまで主流をなしていた、奇抜で装飾的なスタイルが一段落し、「リアルクロース」と呼ばれるシンプルなスタイルが主役に踊り出たのである(p74、一部省略)。

高度経済成長期から80年代あたりまでは、若い層にとって、服は消費の中心的存在だった。家の中より”まち”ですごず、目いっぱいおしゃれしてデートすることに重きが置かれていたのである。それが90年代に入ったあたりから、徐々に変化してきた。バブルがはじけて平成不況に入ったこともあり、家の中ですごすことが、相対的に重視されるようになってきたのである。それとともに、関心の対象が、服から生活雑貨や家具など、家の中のモノに向かっていった。一方、団塊ジュニア世代以下の間では、精一杯おしゃれすること、キメ過ぎることは格好悪いといった感覚が、徐々に広まっていった。上の世代のように、個性的で奇抜な服にお金をかけない、否、服そのものにお金をさほど使わない―そういった志向を持った人々が、相対的に増えていったのである。このような市場背景から、服よりも、生活雑貨やインテリア雑貨に脚光が当たるようになってきた(p198、一部省略)。

本書は日本のバブル期以降のファッション史を見渡すための手がかりとしても使えます。

ユナイテッドアローズ

ユナイテッドアローズ