『モードの社会学(下)』

『モードの社会学(下)』という本をご紹介。著者は土屋淳二さん、早稲田大学文学学術院教授です。専門は集合行動論、文化変動論です。以下、面白いと思った3点。

服飾のモードは着用者の社会的地位や役割を表示する働きをもつ。このことは、ある特定の地位や役割を担う者が、その地位や役割にふさわしい特定の服飾スタイルを身につけるべく社会的に期待されていること、そしてその期待が服飾に着想規範という社会的機能を付与することを意識している。性別や年齢、職業といった社会的地位に"ふさわしい"スタイルが服飾にあたえられることは、着装者にむけられた社会的期待の規範化といえる。したがって、その期待にたいする違反や逸脱には、なんらかの社会的かつ心理的な制裁や罰がフォーマルまいしインフォーマルになかたちで加えられることになる(p18、一部省略)。

たとえば、「高級ブランド製品は高価だが、それに見合う高い品質を備えている」という金科玉条は、「高価商品は、けっきょく"お買い得"」という情宣において頻繁に利用されるイデオロギーである。このイデオロギーによって消費者の側は、いちいち商品ごとに検証しなくとも、"高級ブランドなのだから品質保証済み"と無批判に信頼することができる。そしてそのような信頼が"妄信"へと転化するとき、ブランド企業側は品質情報へのコストを大幅に下げることが可能となる(p66)。

70年代以降となると、スタイルの過剰傾向はメーカーをますます不安にさせるようになる。「消費者の個性化に応えるためにファッションが多様化した」のではなく、「個性化をうまく把握できないがゆえにファッションが多様化せざるをえなかった」というのが、正直なところである(p83、一部省略)。

モードの社会学:下―自由と束縛のファッション力学 (早稲田社会学ブックレット)

モードの社会学:下―自由と束縛のファッション力学 (早稲田社会学ブックレット)