『モードの社会学(上)』

『モードの社会学(上)』という本をご紹介します。著者は土屋淳二さん、早稲田大学文学学術院教授です。専門は集合行動論、文化変動論です。以下、面白いと思った3点。

"機能"は目的との関係性においてしか存在しえない。このような"機能"と目的との結びつきは、あくまで特定の目的と特定の機能が個別的に連結された場合において、はじめて行為者によって確認されうるものである。ひとびとによる目的の設定は、ほんらい任意的で主観的な個人の動機づけに依拠しているため、どのような"機能"をものごとにみいだすのかも、その任意性や主観性に左右されざるをえない(p63、一部省略)。

第三に、ひとの意味解釈のプロセスは、ほんらい個人的なものであるが、ひとは他者とのコミュニケーションをつうじて、みずから解釈した意味を他者と共有化していくプロセスを経験する。ひとびとは、アイテムを選択し採用しようとするとき、多くの場合、他者とのコミュニケーションをとおして各人のアイテムの意味づけを相互に確認し、承認しあうことで、みずからの意思決定と行動の実行を方向付けたり、また選択や採用を断念したりするであろう(p69、一部省略)。

じぶんでみずから衣服を手作りするようなひとは、いまやほとんどいないかわりに、あるのは無数のスタイルと色とりどりの既製服であり、その無限の組み合わせである。もはやここにおいて、"じぶんらしさ"は選択の問題となる(p139)。

モードやファッションには人々のまなざし、集団の利害、そして社会の意味体系などが複雑に絡まりあっていることを本書は教えてくれます。

モードの社会学:上―ファッション帝国の<裸のプチ王様> (早稲田社会学ブックレット)

モードの社会学:上―ファッション帝国の<裸のプチ王様> (早稲田社会学ブックレット)