『21世紀は工芸がおもしろい』

『21世紀は工芸がおもしろい』という本をご紹介。編集者は福本繁樹さん。福本さんは染色家であり、大阪芸術大学教授です。本書は染色、陶芸、金工、デザイン、美術、染織、ファイバーワークなど工芸周辺の専門家たちによる座談会=議論です。以下、面白いと思った3点。

(山口道夫さん)日本では第二次世界大戦後にファッションの分野から「デザイン」という言葉が急激に普遍化し、「デザインとはなんぞや」と十分に考える暇もなく日本語化されました。日本では、1960〜70年代がとくにそうでしたが、デザインの世界で、材料の特性を機能に結びつけてできあがる無駄のないフォルムを良しとし、デコラティブな要素は不要であるといった考え方が強かった時期がありました。通産省の「Gマーク選定制度」による選定製品なども、この考え方に拍車をかけた一員であると思います(pp63-65、一部省略)。

(佐藤道信さん)

(p141)

(北澤憲昭さん)内国絵画共進会が明治15年と17年に開らかれるんですが、そこで、にわか絵の具プラス墨系の絵だけが、正統的な絵画であると制度的に決められる。そこでは、たとえば焼き絵、縫い絵、刺繍、それから漆絵、これらは全部絵じゃないと。これは出品してはならないことになる。そして、このうちの大半が工芸とよばれてきた事情があるんです。すくなくとも歴史的な認識としては、こういう観点をもつ必要があるわけで、そうしないと、いま工芸―たとえば、皮を染めたり、染色した絵が、現代工芸展に出ているのはなぜか、それがなぜ絵画展に出ないのかということが説明できないんです。つまり、技法のレベルで絵画と工芸に分けられてしまうわけです(p184、一部省略)。

本書は工芸が置かれている状況をつかむためにの現代工芸の入門書です。

21世紀は工芸がおもしろい

21世紀は工芸がおもしろい