京都デニム

ある種のクリエイターたちは一つの傾向をもつ。それはボリューミーなエネルギーを有していること。

今日、お会いさせて頂いた京都デニムのデザイナー、桑山豊章さんもその一人である。京都デニムは京都発のデニム工房だ。桑山さんは言いたいこと、やりたいことが山ほどある。彼のものづくりに対する徹底した姿勢は、その声や身振り手振りに宿る。だから彼の語りは豊かであり、実に魅力的だ。

例えば、このデニムを1本制作するのに1年ぐらい時間がかかるわけです。デニムのステッチから染め・洗いまでを徹底的にこだわり抜くからです。商品に問題があるのかどうか。その試験を繰り返して、問題が見つかれば、またそこに戻ってやり直す。その工程を重ねていきます。このベルトループのステッチは金糸なんですよ。その金糸が洗いに耐えられるのかどうか。そういう試験を繰り返す。あるいはこのワンピースの染めです。つい最近まで寒かったのに、急に春みたいな天気になると染めにかかる工程も変わって、大変でした。注文して頂いたお客様の納期に間に合うかどうかがあるからね。

妥協しようと思わないのですか?

うーん、それは思いますよ(笑)。でも、妥協したらものづくりではなくて、ただの物売りになるでしょ。それだと意味がないんですよね。僕らがやってることは、プロダクト的なものづくりじゃなくて、世界に通用する京都発のデニム作りなんですよ。京都に来ていただいたら、ウチのデニムが思い浮かぶことを目指して、すごくゆるい感じで動いてます。デニムだと股上が浅いとか深いとか、そういう流行がありますよね。だから、ウチは流行に乗るのが難しいけれど。

今日も女性客がデニムを購入していました。客層は?

色々です。あるリピーターの方は前回ご購入いただいたデニムの染めや図柄を重ねるご依頼をして下さったり。京都の観光雑誌をご覧になられたお客様がウチに来ていただいたりとか。この前は、デニムをご購入頂いたお客様から「友達からすごく素敵なデニムだといわれました、ありがとうございます」というお手紙とお菓子が来てね。すごくうれしかったです。

京都デニムは興味深い存在だ。というのも、京都デニムはお店を増やすつもりもなければ、卸値を付けるつもりもなく、これからも京都に根付いたものづくりを続けていくというからだ。つまり、京都デニムはファストファッション化の対極に位置づけられる。その活動を語ることは同時にファストファッションをあぶりだすことになる。あるいはファストファッション化が進めば進むほど、京都デニムの存在は注目されるともいえよう。

お店は京都駅中央口を出て徒歩5分。扉を開けば、オフホワイトを基調にした清潔な店内に、色鮮やかな和デニムの数々。営業・広報担当の宮本さんの接客も京都デニムの魅力の一つ。