パピーウォーカー

フリーペーパー「SHIGA-ICHI!!」の取材の一環として、パピーウォーカー(以下、パピーと呼ぶ)のAさん宅を訪問した。パピーとは盲導犬の候補犬を飼育する奉仕者のこと。パピーは、生後2ヶ月前後の候補犬が1歳前後になるまで預かる。

この段階の主な目的は候補犬を人間社会に慣れさせること。パピーになる主な条件は犬好きで、清潔な家空間を有していることはもちろん、できれば多様な世代が家庭を構成していることが望ましい。候補犬たちはパピーを通じてそれらに慣れていく。

盲導犬は特別な犬だ。特別な犬は特別な訓練を施されるが、この段階のルールはゆるい。手で食べモノを与えないこと、テーブルから食べモノを与えないこと、ベッドで一緒に寝るのではなくゲージで休ませること等。

Aさん宅の候補犬は僕らの訪問に興奮している。彼は部屋中をダイナミックに駆けまわり、僕にダダダーと近づき、僕の膝まで前足を伸ばす。彼は僕のへそ当たりを鼻でかぐ。その間1秒。すぐさま隣のスタッフに移動し、それを繰り返す。落ち着かない彼は僕の足元の床へ黄色い粗相。僕は平静を装うが、気が気ではない。よかった、靴下は無事だ。彼はまた部屋中を駆ける、駆ける、そして駆ける。彼は身体を休ませたかと思えば、スクっと立ち上がり、跳ねまわる。彼は犬ガムを咥え、ガリガリ遊び、それを離し、また走る。子どもたちは「カム(来い)、カム」と繰り返し、彼とじゃれあい、時に全身で彼を抱きかかえる。

彼は見ず知らずの僕らに対して一度もほえることがない。彼はその後、僕らが話すテーブルの下で身体をじっと下ろしていた。訓練士さんは彼を優秀な候補犬だろうと評す。

候補犬の10頭に1〜2頭が盲導犬の訓練に合格する。彼が盲導犬として活躍する姿を、僕は今のところ想像できない(本当に元気いっぱいだから)。彼は大変に楽しみな候補犬だ。

わかる! 盲導犬のすべて

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