火傷をながめる

BDシャツのアイロン掛け。素材は綿だからアイロンの温度設定は一番高い。アイロンが左手に触れる。

あづい。

声が勝手に漏れ、左手をアイロンから反射的に離す。反射的に離しても遅かったという意識がヒュっと立ち上がる。左手を見る。ズリ落ちた皮、そこから見える赤い身、周辺の白くただれた皮膚。火傷した。その大きさは500円玉程度。

左手に冷水を当てる。左手が冷えて、赤くなる。火傷の部分はジンジンする。左手にタオル当てて、水気を吸い込ませる。

10分後。冷水の残りだろうか。薄い膜が赤い身を被う。白くただれた皮膚は赤みを帯びる。その形は小島のようだ。痛みが増す。

リライトの仕事をしながら、時々左手を見る。薄い膜はずり落ちた皮膚の代わりのように、かさを増す。膜の色が判明する。黄色いあめ色。

50分間の音楽を聞き終わる。薄い膜は盛り上がる。それは一滴の水滴のよう。形はドーム型。水滴は今にも左手からこぼれそうだが、こぼれないし、増えることもなく、形を保ったままだ。タイピングを続けているというのに。痛みは続く。

60分間の音楽を聴き終わる。リライト終了。クライアントに原稿をメールで添付する。火傷の痛みが消えている。火傷の部分にある種の冷ややかさを感じる。水滴の表面が乾き、下から固まり始めた。それは古びたイクラのようだ。周辺のただれた皮膚の色は赤みからピンクへと変化。

30分後。徐々に固まり始める水滴。ドーム型のそれはしぼみを見せ始める。