平然とゲップ

5本指ソックスは体にいいらしい。面白そうなので、1年前に買って、着用してきた。実際に面白かった。5本指ソックスが指の股から指の一本一本を丁寧に締め付けて、指も指の股も不快だった。5本指ソックスを脱いだとき、やけに解放感があって、爽快だった。それは普通のソックスの比でない。そういう面白い発見があった。俺は5本指ソックスをゴミ箱に捨てた。

5歳ぐらいの娘とその母親がエレベーターに乗ってきた。今朝のことだ。小さな娘がゲップをした。
母親「もうやめなさいって」
娘「やってないもん」
小さな娘は平然とゲップを繰り返した。
母親「だからやめなさい」
娘「だってやってないもん」
俺は内心で「お前、ゲップやってただろー!」と突っ込むが、子供はかわいいなあという思いが先行して、それから俺は子供のころを思い出す。俺もそうやって母親から叱れていた。親子が3階でエレベーターを降りて、扉が閉まる。エレベーターは上に昇る。俺は空気を飲み込み、ゲップを1回。この感覚、あの記憶。懐かしい。

ファミレスで飯を食ってると、3人の高校生が席に着いた。3人はスマホを取り出し、会話をしない。3人はやがて飯の内容を話し合い、またスマホに戻る。一人はスマホを触るのをやめたが、他は触り続けてる。飯が出てくる。3人はスマホをいじりながら、飯を食って、しゃべっている。嫌な世の中になったもんだ。

茶店で読書。二人の女が二席隣に座る。そのうちに彼女たちの話がなぜか俺の耳に入る。東京弁だ。観光らしい。やがて一人が俺のほうを向き、もう一人もこちらに向く。俺は彼女たちの視線を感じ、読書が身に入らず、恥ずかしくて、そちらを見れない。俺の視界に入る色は女の洋服と頭の色だけ。これは逆ナンだ。俺は逆ナンに興味ないですというオーラを出し続け(本当は興味がある)、読書に没頭しているふりをする。俺はコーヒーを飲み終え、帰り支度を始める。その際、俺は視線をそちら側に向ける。2人は若い女ではなく、色の白いおばあさんだった。俺のワクワク感を返せ。

美味そうにクレープを食べている人とすれ違ったとき、美味そうにジュースを飲んでいる人を見たとき、俺は突然、しかしさりげなく、その実、当然のように「それ美味そうですね、一口頂けませんか」と言う。そしたらその人はびっくりして、しどろもどろになって、「いいですよ」って言ってくれるだろうか。