本を捨てた

本を6冊捨てた。
積読の本で、この先も読みそうになかった。
俺にとって本は大事なものだから、本を捨てるのは難しかったが、本を捨てた。
本を捨てたわけは別にどうでもいいが、本を捨てたの自分の気持ちや情景を忘れたくないので、つづる。

俺が本たちをゴミ箱に捨てたとき、
それ以外はゴミ袋=透明なスーパーの袋の中に何もなかった。

ちり紙や体毛、生ごみ…生活から出てくるあらゆるゴミが捨てられ、ゴミは次第にかさを増していく。
本たちはこのゴミ袋という空間の中では異質な存在で、大変によく目立った。
本はどこまでいっても本なのだ。
だからゴミ箱にある本はゴミではなくて、ゴミ箱にある本だった。

そうやって時々、ゴミ箱=スーパーの透明袋を眺めていると、本たちが得意げにいう。
「俺たちはゴミじゃないから、ここから出してくれ」。

本たちはこの場所から救われる可能性を疑っていない。
本たちは、俺がどれだけ本を好きかをよくわかっているからだ。
だから俺は心が痛んだし、また同時に少し残酷な気分で、小さな快感を得てしまった。
俺は本に対して初めて優位になった。本たちは俺のこの満足心を知らない。

それで実際のところ、俺は本たちを机に、書棚にまた戻そうと考えた。
考えて、またゴミ袋の下に堂々といる本たちを見ると、
本たちはゴミにまみれながらも、誇りを失わず、本であり続けた。
本たちは相変わらず俺のことを静かにじっと見ていたし、
「自分たちがいてしかるべき場所はここではないから、本棚に早く戻してくれ」と罵声を浴びせることなく、
どこまでも純粋に主張していた。
それは愛おしくも見えたし、忌々しくもあった。
本たちは忠実な犬に似ていたし、昔の恋人が見せた疑いのない好きという気持ちのようでもあった。

ゴミ袋越しに本の色や厚みや形も見える。
俺はその重さや書かれてある内容や頭に入らなかった俺自身のこと、その本を買った理由やその本を読んだ場所を思い出した。

俺はゴミ袋を縛り、ゴミ袋の結び目に指を通し、運び出す。いつもより確かに重い。
本たちはこの部屋を連れ出されて、ゴミ置き場に捨てられる瞬間まで本としての役割を果たそうとしていた。
役割を果たすことが、自分の務めであることを信じて、疑わないのだった。

俺は「ごめん」と本たちに謝って、今夜、本たちが入ったゴミ袋をゴミ置き場に投げ捨てた。
それらは他のゴミとぶつかって「ガサ、ガサガザ」と音を立てて、転がり、臭いゴミ置き場にある場所に定まった。
明日にはごみ焼却施設に運ばれるだろう。

さようなら。

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