白髪頭のばあさんとコーヒー

俺は今日、仕事帰りのドトールで、
ハニーカフェオレを注文したあとに、
「我ながらなんてかわいいものを注文するのだろう」と
小さな俺が俺に恥ずかしそうに伝えて、
「それは本当にそうだよな、
あれちょっとというか、過剰に舌に残る甘さなんだよな」と
答えたときに、俺の後ろに並んでいた白髪頭のおばあさんが
「ホットください」と店員に伝えた。


店員は「サイズはどうされますか?」と質問して、
おばあさんが「XXL」と答えると、
店員は「それなら、こちらのバケツサイズのコップをご用意します」と
平然と準備して、
ばあさんが両腕で白磁のバケツコップを抱え、
その場でごくごく飲み干す。


白髪頭のばあさんの身長は155cmほどで、細身、
小豆色のニットが似合っているが、よく考えるまでもなく、
そんなばあさんはありふれている。
ありふれているのだが、バケツコップのコーヒーを飲み干すばあさんは
世界中のどこにもいないので、
俺は白髪頭のばあさんの存在に驚愕して、
それからなぜか、そのばあさんの存在にひどく納得したときに、
「ハニーカフェオレお待たせしました」と店員から声をかけられて、
俺の映像と思考は中断され、
自分のテンションが上がっていることに気がついた。


ばあさんが手にしていた白磁のコーヒーカップ
普通のMサイズだった。