ポニーテイルの娘

エレベーターが3階で開いた時、
母親と小さな娘が乗り込んできた。
色白の娘は天然パーマのポニーテイルだ。
年は3歳から5歳だろう。

娘は私を見た途端、母親の背中に回り込み、
私から隠れた。隠れたのだが、娘はひょいと頭を出して、
私を確認し、また隠れて、みたび私を見る。
エレベーターが1階に到着すると、娘は脱兎のごとく
飛び出し、母親が遅れて歩いていく。
脱兎のごとく飛び出した娘の歩幅は実に小さく、
私との距離は確かに広がるのだが、
私にとっては広がっていない気もする。
そういう歩幅だ。
タッタッタ・・・という感じだろうか。

娘は母親が来るのを振り返って待ち、
私を見る。母親が娘に追いつくと、
娘は母親の前に立って、私を眺める。
どうしたものかと思った私は娘にバイバイと手を振るが、
娘は私をただ眺めているだけだ。
私の視界から娘が消え、振り返ると、
娘は私をまだ眺めていた。

私は目が大きいし、中年だし、オールバックだし、
もしかしたら娘の周辺にいるような
大人ではないのかもしれない。
物珍しいのだろうか。

最近、陽が長くなったあと夕暮れにならない夕暮れの街を歩いて、
私は家路に着いた。