秋の夜と我が家の猫

私が『高校生のための経済学入門』を読んでいたら、


高校生のための経済学入門 (ちくま新書)

高校生のための経済学入門 (ちくま新書)


我が家の猫が机の上にヒョイと上がり、
本をかぶりと甘噛みをして、


「そんなもん読んでないで、
あたしと遊びなさいよ」と言ってきたので、
言われたような気がして、
私は猫じゃらしを使って、猫と遊ぶ。


私はそれからこの日記を書いているわけだが、
猫がパソコンの隅から、片手をを出して、
タイプ中の私の指に触れて、


「そんなもんしないで、
私に構いなさいよ」と言ってきたので、
言われたような気がして、
私は筆を置く。

猫と抜糸

我が家の猫が避妊手術を受けて、10日目。
今日は動物病院で、抜糸を受けた。


抜糸の糸は金属だ。
私が猫を万歳させて、
獣医が糸にはさみを入れて、
切って、抜いていく。

突然、猫が暴れ出し、
はさみの鋭い先端が猫の腹に刺さったら
どうしようかと私は気が気じゃない。


獣医の指先見ると、
糸はジグザグに3回、
縫われていたようで、
だから獣医はジグザグの
ジグとザグにはさみを入れて、
糸を切り、抜く。


1本目、2本目……
3本目にして猫は怒る。


不ーーーー!


まあまあ、ネコさん。
そんなに怒らないで、
もうすぐ終わるから。


と獣医は猫をなだめ、
抜糸は2分とかからず、終わる。


それから爪切り。
私は同じ姿勢で猫を万歳させ、
獣医は後ろ足の爪を手際よく切っていく。
前足に移ると、猫が


不ーーー!
不ーーー!
不ーーー!


と怒るので、獣医は助手を呼び、
助手は、猫の視線が爪の方向に向かないように
頭を撫でて、注意をそらすが、もちろん
そんなことで我が家の猫の怒りは収まらない。


不ーーー!


はい、終わったよ。
最後に抗生物質の注射を打とうね。


注射は1秒もかからなかった。
猫は鳴く暇もない。


私は猫を犬猫用のリュックに入れて、



「よく頑張ったね、あんた偉いよ。
家に帰ろうね」
とぶつぶつ声をかけながら、病院を後にした。


私は唐揚げ専門店で唐揚げ弁当を買って、
猫は帰り際ににゃーんと細く鳴いて、
客のおばさんが怪訝な顔をしていた。

爪切りが激烈に嫌いな猫

今日猫と帰省する。
猫爪による迷惑が親の家で最小限になるよう、
俺は猫の爪切りを済ませたかった。


俺は家から最も近い動物病院に行った。
ここへ一度行ってみたかったのだ。
待つこと30分。


受付「今日はどういった理由で?」
俺「爪切りです」


10分後
ようやく名前が呼ばれた。


獣医師は額から後頭部にかけて毛がなく、
小麦色の肌で、腹がぽっこり出た160㎝ぐらいの
男だった。年は40代前半だろう。


獣医師「お待たせして、すみません。純血種ってねえ、爪切り嫌がるんですよ」
俺「そうなんですか」
獣医師「この子、爪切り嫌がるんですか。一人では無理なぐらい?」
俺「一人では無理で、暴れます」
獣医師「じゃあ、猫の前足の付け根を指をリング状にして、持ってもらって」
俺「わかりました。こうですね」
獣医師「そうです。そんなに暴れる?」
俺「それはもう暴れます」


獣医師は立ち上がり、診察室を出た。
獣医師はエリザベスカラーを手にして、
猫の首まわりにぱちぱちハメていく。
楽しみで仕方がない。
エリザベスカラーは初めてだ。


猫は獣医師の膝の上に乗せられて、
獣医師が前足の爪を1本切ると、
獣医師の顔を見て、


フーーーーー!
と威嚇し、2本目に移行した時、


フーーーーーーー!
フーーーーーーー!
フーーーーーーー!


威嚇連射。
一貫して変わらぬ爪切りに対するその態度。
獣医師は大きく深呼吸をして、息を吐深く。


獣医師「これはすごいですね」
俺「そうなんですよ」
獣医師が爪切りを続けようとすると、
猫が


ksjgさkjかslじぎおじwwjlsfsl;s!


という大声を診察室に響かせ、こんな大声は今まで聞いたことがなかった。
その大声が俺の心に染み入る。
なんていい声なんだろう。


受付のスタッフがたかが爪切りに一体何事かと
ガラス越しに診察室をうかがっている。
この大声は待合室にも届いているに違いない。


お前、待合室では「にゃあ」と穏やかに鳴いて、
他の犬どもがワンワン威嚇しあってるときも、
お前だけはおとなしくて、品がよかったのに。
俺はおかしくて、笑いだした。


俺「あんたもっと静かにしい。そんなに嫌なんか(笑)」


猫は獣医師の両手で抱かれていたが
ジタバタしているので、


獣医師「これはちょっとすごいですね。
もう、カバンに入れましょう」


といって、猫をカバンに戻し、
俺はバックのチャックを閉めた。




獣医師「ここまで爪切りが嫌いな猫だと、毎日1本ずつ
猫が寝てるときとか機嫌がいいときに1本ずつ。
18日かけて、切っていく」
俺「はい(笑)」
獣医師「そうしないと、もう爪切り=嫌なものっていう
意識も出てきて、難しくなっていくと」
俺「わかりました(笑)。どうもありがとうございました」


俺は猫を入れたカバンと右手で持ち、左手で
診察室のドアを開けて、待合室で待機する。
猫はおとなしい。待つこと5分。


受付「間山さん、今日はお金、いりません」
俺「どうもありがとうございました」
猫「・・・」


俺は動物病院を出て、猫に言った。

「お前、よくやったな。獣医さん撃退したんやで。
偉いわ。もうあそこの病院は行かんとこうな。
お前が避妊手術受けた獣医師の先生は
お前の爪切り、3分とかからず、爪切ってくれたな。
助手の人がお前の注意を上手くそらして。
今日はいいもん見せてくれて、ありがとう」


猫は冷房の効いた部屋で
俺の足元で横になって、腹を見せて、眠っている。

よくやった!

我が家の猫は、爪切りが大嫌いだ。
だから私は我が家の猫の爪切りをほとんどあきらめ、
猫がうっかり寝ぼけてるときに爪を切ったが、
そんな機会はめったに訪れず、爪の切り残しもあったし、
日が経つにつれて、切った爪は伸びてくるのであった。


こういう猫の性格からして、私は期待していた。
動物病院でワクチン注射の際に、どんなに暴れるのかを。
我が家の猫はスコティッシュで、獣医はおとなしい猫種だと
思いこんでいるらしい。
獣医が我が猫に注射を打った瞬間、
私の期待は最高潮に達したが、
我が家の猫は
「ニャ!」と
短く、鋭く鳴き、
獣医の「偉い!」という一言を聞いた時、
私は拍子抜けした。


私は困った申し訳ない顔をして、爪切りのことを獣医に切り出すと、
獣医は「いい方法があるんですよ」といい、
大きなタオルを猫の顔にかぶせた。
視覚を遮った爪切りである。
もちろん私は「先生、それは私もやった方法だよ」
とは言わない。プロに任せるだけである。


獣医が我が家の猫の足を触る瞬間まで
我が家の猫はおとなしかったが、
爪切りが爪に当ると、
全身で身をよじり、
「にゃぎゃー」と
抵抗する。


私は「やった!」とほくそ笑み、獣医は
「あ、これはやんちゃですわ」と驚いたが、
「まだあるんですよ。この洗濯ネットに猫を入れて、
足だけ出して」とうれしそうである。
かくして、洗濯ネットに入れられ、タオルで視界が閉ざされた
我が家の猫がおとなしく爪切りされるかといえば、
またもや全身をよじって、抵抗の意思を示し、
次は
フーーーーー!
と警戒音を響かせ、獣医は「この子は大変ですわ。
大変やったでしょ、お兄さん。
もしかしたら、この子、病院嫌いになる
かもしれへんなあ」という。


私は
「よくやった!さすがは我が家の猫だ!えらい!」
と思った。そのわけは
我が家の猫は自宅か病院かという環境に関係なく、
爪切りが誠に嫌いであることが判明したからだし、
獣医のスコティッシュはおとなしいという
思い込みを打ち消してくれたし、
この獣医は私たちが診察室に入るなり、
「なにも立て耳のスコティッシュなら、他にいるでしょう。
捨て猫の里親になるとか」と言い放ち、
私は「はあ・・・そうですね」といなしたが、
獣医は時間をおいて、「スコティッシュは関節の病気があるからね。
別の猫ならないけど。どうしてスコティッシュ?」と
絡んできたので、
私は「縁ですから」と小声で答え、
「余計なお世話だ、バカ野郎」と思ったからであるし、
この獣医は「おにいさん、猫の名前、書いてくれへん?」
と一貫して私をおにいさん呼ばわりし、
職業にものを言わせる無礼者に思えたからである。


かくして、ワクチン接種、爪切り、体重・体温測定、
耳掃除を終えた我が家の猫は病院を後にして、
我が家に帰宅したのであった。

我が家の猫が苦手だ

私が仕事を終えて、家に帰るのを少しためらったのは
私が我が家の猫に苦手意識を持ったからである。
うちの猫は猫らしく、トイレを覚え、
爪とぎ場をその日に覚え、甘えたいときだけすり寄り、
私が移動すれば、間をあけて、やってくる。
朝夕に意味もなくばたばたと走り回り、
爪切りを全身で嫌い、噛み癖は棒相手に矯正され、
私相手ならほとんど矯正されず、
私が疲れて帰宅すれば、机の上に前足をクロスさせて、伏せっている。
私があれ、いないなと思えば、私から少し離れたところで待機して、
私をじーーーーと見つめる。時には窓際から外を眺める。
私が甘えたい時に甘えさせず、
私が縄を動かせば、反応して、縄をぐるぐる円をかくように回せば、
ぐるぐる回って、一瞬よろめき、私を大いに笑わせたが、
我が家の猫は賢いのか、次からこの遊びに反応しても、
乗るのはわずかで、体をと前足をばたばたと動かす程度である。
噛むことの罰として、私がシャワーを浴びせかけると
全身で拒否し、暴れまわり、逃げる。
風邪をひいてもらうのは困るので、私は首根っこを
つかんでおとなしくさせてから、タオルで全身を拭くが、
しっかり抵抗されるので、しっかり拭いてあげる。
我が家の猫の容姿はかわいいけど、
性格はまさに猫そのもので、私はバカだと、
仕事帰りのドトールでコーヒーとどら焼きを食しながら、
隣のおじさん2人が株で損をしたことを
本に目を通しながら、聞いていた。
苦手意識をもってしまった私は今日は猫の相手をしないことにした。
我が家の猫は今日も一通りの行動を示した。
我が家の猫は畳の上で大の字になって、寝ている。
私を含めた環境そのものになじんできたのであろう。
のんきなもんである。

我が家の猫

爪とぎ、トイレを覚えた我が家の猫。
段ボール、紙、本、線、ティッシュを見れば、
これでもかと噛み、
大きなものには飛びかからず、小さく弱いモノに飛びかかる。
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と今、我が家の猫がキーボードの前を横切った。

我が家の猫は冷えたペットボトルで結露した水滴を
ぺろぺろと舐め、
ウナコーワクールパンチを近づけると
まぶたをしばたかせ、舌をぶらぶらと
だらしなく出し、
私が移動すれば、ついて回り、
私が近づけば、ゴロゴロと喉を鳴らす。
1日2度変える水を舌できちんと吸い上げ、
食事はバカ食いをしない。
ゴロゴロの臭い糞を出し、それが終えると、
にゃあと私に知らせ、私は糞を片づける。
基本的なことは全部できる利口な猫だ。

こいつは猫という。・ZZZZZXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX

猫という動物であって、雑誌や書籍で取り上げられている
穏やかな性格の猫ではないとわかっていて、私はこいつをもらい受けたが、
あの穏やかな猫にすればよかったと思うことすでに5回。

昨夜、私が爪を切ろうとした際、こいつは全身をよじって、
激しく抵抗し、ニャアというよりも、ギャニャア!というか細く、
激しい野生の叫び声をあげ、結局、爪は左手3本しか切れず、
そのうちの1本を切った時、「キャニャア」と甲高い飼い主に
抵抗するようなせつなく、だからこそ心に残る癪に障る声を上げて、
いらだち混じりの私は爪切りをあきらめた。
餅は餅屋に任すべく、
来週のワクチン接種の際に爪切りを動物医にお願いしよう。
お互いのために。

縄で遊ぶと、こいつはあまりに興奮し、かわいさのかけらもなく、醜い。
うっとおしささえ感じる。
玄関の土間で待機して、私をじっと見る。
時折、ドアノブを見つめて、届かないドアノブまで体を伸ばす。
ここから出るか。それもいいかもしれない。
狭いここを出て、外で暮らしたほうがいいかもしれない。
お前は元気だから。
このマンションは優しい人が多いから、餌の一つも与えてくれよう。
とさえ思う。

私に左半分の顔を撫でられると、気持ちがいいんだろう。
残りの右半分の顔を差し向けるお前。
にゃあと鳴いて、何?と問うと、
ととと……駆け寄る。
愛憎入り混じった存在になんだろうか、お前は。

我が家に来た猫

「よろしくです!」と
そのブリーダーは別れ際、僕に言った。
「こいつとずっと一緒に楽しくいてやってください」
と僕は解釈した。ブリーダーはこいつの晴れの日を
お別れの意味を込めて、シャンプーで応えた。


僕らは地下鉄に乗り、
僕はこいつの名前を決めかねていた。
たまお、あめお、みゃんおう、梅吉、梅子、うめお、むっちゃん・・・
それで僕は時計を見たときに
「きっと家に着くのは7時ごろだろうな」と思った時に名前を決めた。
うちに着く時間が7時。
彼女の名前はななに決まった。


ななは一度も鳴くことなく、
我が家にたどり着いて、1時間半はバックから出てこなくて、
バッグのヒモをガジガジと噛み、
それから部屋をじっくり見分した後、
少し落ち着いたのか。次に走り回って、
またたびをまぶした爪カキで爪とぎをして、
段ボール箱やらプチプチやらをかじり、
僕はベルトや空のペットボトルを使って、ななと遊んだ。
ななの甘噛みの癖は今も続いている。


僕は餌と水とトイレを用意したが、
ななは餌と水は取らず、トイレはどういうわけか
ななの一つの居場所になっていて、僕は
「あんた、そこはトイレだよ。なんでそこんにいんの?」
といっても、ななに通じない。
ななは玄関の土間が好きらしく、片隅に身を寄せていた。


僕が風呂からあがって、ななは僕の足に体をこすりつけてきた。
僕は椅子に座る。ななは僕を見上げていたので、抱いて、
それからななを撫でた。ななはゴロゴロと喉を鳴らしているのか、
鼻をならしているのか、それとも先天的に鼻が悪いのか知らないが、
ゴロゴロという音がしていて、猫の本に寄れば、
これは甘えたいということらしい。


とにかく我が家に猫が来たのだ。
知らない生き物と同居している不思議。
なんだろうか、これは同棲初日のようなぎこちない感覚だ。